常識を破って作られた新しい形の病院

世界の環境もルールも大きく変わっているから 変わらない意識や
組織とのずれに誰もが違和感をいだくようになります。

医療の世界でも何かへんと感じて 自ら新しい形の病院を
作っている方の著書を続けて3冊読んでみました。


”あなたの仕事は「誰を」幸せにするか?” (ダイヤモンド・グラフィック社)
”「病院」がトヨタを超える日” (講談社+α新書)
”「病院」が東北を救う日”   (講談社+α新書)

著者である北原茂実氏とちきりんさんとの対談が2014年10月26日付けの
「Chikirinの日記」に掲載されていて、いつか著者が書かれた本を
読んでみたいと思っていました。


かつて日本は若者の比率が高く、意欲的な働き手と意欲的な消費者に
溢れていたので、経済が活性化されていました。

ところが少子高齢化の社会になると 消費欲の少ない、リタイアした高齢者が
増えてくるため 国全体の経済が停滞していきます。

この大きな曲がり角では 今までの国民皆保険制度を維持していくのは難しく、
国の経済が危うくなってきてきます。

そこでお医者さんである著者は民間の力で新たに病院を作ろうと決意されました。

まず試みとして規制の少ないカンボジアで理想と考えられる病院を作り、
成功させ、日本に逆輸入しようと考えました。

次に八王子に新たな発想での病院を建設し、医師や職員と患者の境界線を
あいまいにして、街の人たちを取り込んでいきました。


衝撃を受けた言葉をいくつか引用します。

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医療は産業です。「これから産業化していく分野」ではなく、事実として
すでに産業なのです。-----(略)---------
現在、医療(福祉を含む)の仕事に従事している人たちは、700万人を
超えています。これが2020年には834万人になり、2030年には944万人と、
日本最大の産業になっていく。 いま現在でさえも、700万人以上の人が
医療で生計を立てているのです。もしもこれが産業じゃないとしたら、
なんなのか。

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医療とは「いかによく生き、いかによく死ぬか」を総合的にバックアップ
すること、つまり幸せな人生を支援する総合生活産業なのです。

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モノやサービスを受け取るには、対価としてのお金を払う必要がある。
こうした従来型の貨幣経済の常識を取り払って、自分がお金以外のかたちで
「価値」を提供できるのだと理解してください。 そして医療とは、医師から
与えられるものではなく、自分も誰かに与えることができるものだと理解
しましょう。「医療とは総合生活産業であり、すべての仕事は医療である」
とは、そういうことなのです。

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医療は富裕層のためのものになってしまうと心配する人たちへのメッセージです。





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いま日本には、過去の自分を捨てる勇気が求められている、というのが
私の見解です。これは「ものづくり大国」としての職人的な誇りを捨てる
勇気でもあり、「世界に冠たる国民皆保険」の幻想を捨てる勇気でもあります。

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むしろ医療とは、患者も医療者も自国の中で完結する「地産地消」で
あるべきだ、というのが私の考えです。

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こちらは最近よく耳にするようになった ”医療ツーリズム” に対して
警鐘を鳴らす言葉です。 利用する国も利用される国も共に医療が
衰退してしまう形態だと著者は考えています。



そして強く主張されていることは善意では社会は動かない、自らの
志をビジネスという形にしなければいけないということです。

社会を変えるのは私たち一人ひとりの市民であり、実現する手段が
ビジネスであると繰り返し説いています。



医療を民営化してしまうと アメリカのようになってしまいそうで恐ろしいと
考えていたけど、強い意志と創意工夫があるならば それは避けられるのかもしれません。