小説「小さいおうち」 美しい奥様とその家にお仕えした女中 そして・・・

久しぶりにいい小説を読みました。

たぶん最終章が重要なんだと思うけど、
わたしにとって他にもっと興味をそそるものがありました。

それは戦争によって一般市民の生活が大きく
変わっていく様と女中奉公という仕事についてです。

市民がしだいに戦禍に巻き込まれていく様子は 今まで
どれだけドラマや小説や直接当時を経験した人たちから 
知らされてきたことでしょう。

それでもまだ聞いたり 読んだりし続けるのは 
男が戦場で戦うということだけでなく 子供も年寄も女も誰もが
食べ物にも着る物にも出かけることにも住むことにも制限がかかり、
お互いに監視する社会にしてしまう戦争とはこういうものだ
ということを わたしの脳裏にしっかり焼き付かせていたい
という気持ちがあるからだと思う。

決してただの昔話ではないからです。

また女中奉公という仕事についても 明治、大正、昭和を
生きた人たちから断片的ではあるけれど 直接聞いていて 
はるか遠い昔のこととは思えないのです。

まだ10歳そこそこで家族と遠く離れ 住み込みで働く。
家族の中で一番早く起きて、一番最後に寝ること。
家事も卒なくこなしながら 何があってもご主人様一家を
お守りせよと教えられて 家を出る。

今だったら人権侵害と言われかねない仕事だったんでしょう。
でも女中タキはそういう仕事に誇りを持っていました。

赤い三角屋根の小さいうちの人々に可愛がられ、美しい
奥様から格別な愛情を注いでもらいました。

つらい奉公生活を送った仲間もいた中で 少なくともタキは幸せだった。
知恵と工夫を重ねた毎日、タキの職業的能力はあの時代にたいへんに
磨かれ、発揮されたのです。

映画の「小さいおうち」ではタキや時子奥様がどんな風に
演じられていたのでしょうか・・・

小さいおうち

小さいおうち