スーパーや八百屋さんに並ぶ ”有機野菜”という表示に
なぜか最近ときめかなくなっています。
むしろ ”ほんとにそんなにいいものなの?” という
思いのほうが強いです。
今回は茨城県在住の会社員から農業へ転向された
久松達央氏が書いた 「キレイゴトぬきの農業論」(新潮新書)
を読んでみました。
ひと口に有機農業といっても それぞれ人によって
解釈が違います。
この本の著者が捉える理想とする農業は、
生き物の仕組みを生かす農業であること
野菜の味を決める 栽培時期(旬)、 品種、
鮮度という3つの大きな要素をはずさないこと
有機野菜は安全な野菜ではなく、「健康な野菜」で
あるべきで、「その個体が生まれもっている能力を
最も発揮できている野菜」であること
などなどです。
無農薬であるとか、化学肥料を使わないとかそのものが
目的ではなく 著者が考える理想の野菜を作るための
手段にすぎないといいます。
巷に溢れる有機野菜は目的化した無農薬、化学肥料を
使っていませんということを謳っているにすぎず、著者の
理想とする野菜であるとは限らないと書かれています。
ほんとにいいものなの?という疑問が少し解けてきました。
「土の生き物を大事にし、高品質の野菜をつくる農業者は、
慣行農業をしている中にもたくさんいます。逆に有機農業を
やっている人でも、健康でない低品質の野菜をつくる人も
います。 健康で品質のいい野菜づくりが目的であるなら、
線引きは有機・非有機の間にあるのではありません。
目的をどこに置き、それに合理的にアプローチするかどうかの
手法の問題だと思います」 (引用)
ただ久松氏自身は 野菜の生育に力となる土の中の微生物を
減らさないために 一般に言われる有機農法も合わせて用いています。
農薬に関しても 今は研究が進み、安全面でみれば特に
問題はないそうですが、農薬を使うことで 淘汰されるべき
弱い株の野菜も生き残ってしまうのを防ぐため、著者は
農薬を選択しないということです。
ものごと何でもそうですが、良いか悪いか短絡的な
選択でなく、その中間にある可能性も考えないといけません。
感情的に判断するのでなく、自分は何を望むのかそれぞれが考えて
店頭なりネットなりで買えばいいんだと思います。
他にも興味深い話があって、例えばコンビニのおでんの大根。
ずっと火が入っているのに 何で大根はくずれないのか。
実はあれは煮崩れしない品種の大根なんだそうで、全国で
出荷されるおでん用の大根の数を考えれば 品種改良して
充分元がとれるものなんですね。
こちらの久松農園の料理サイト 「ベジレシピン」には
ほっこりするような野菜料理が満載です。
生産者の野菜に対する思いが伝わってきます。
これからは生産と販売が別個のものではなく、生産者と消費者が
共に繋っていたいと考える人が増えてきているということです。
”有機野菜”という形だけの表示だけでは決して伝わってこない
生産者の思いに触れることができたなら 作物はもっと
美味しいと感じます。
その時は 他と比べて少々高くても それは仕方ないよね
となります。